父の遺言書
これから相続を考えておられる方々の参考になればと思い、
「揉めない相続の為に」私事で恐縮ですが、
実際の出来事として、以下に記載します。
「毎年、元日に書き直している」と言っていた父の遺言書が
「無い!」
部屋という部屋、棚や引き出し、自宅のあらゆる場所を隅から隅まで探しても
「無い!」
貸金庫の鍵らしきものが見つかったので、母と一緒に
「ここに違いない」と勇んで行ってみたものの
スチールの貸金庫の引き出しの中は
「空っぽ!」
お屠蘇で迎える新春の朝、
毎年、家族全員の前で話していたので、
「そんな筈はない!」と皆
首をかしげる始末。
謹厳実直な父が嘘をつくはずがない。
さては、内緒で先に遺言書を開けた親族の誰かが、
自分に都合の悪い不利な分割内容だったので
「隠した?」
「破棄した?」
と、兄弟姉妹がそれぞれを疑い、
その「誰か」を想像して疑心暗鬼になる毎日でした。
「遺言を書いている」なんてことを父が口に出さなければよかったのに、
書いていることを公言するならば、内容も教えてくれたら良かったのに。
前もって分割案を聞いていたら生活設計を立てやすいし、
分割案に不満なら、意見調整が可能だったのに。
思い起こすと、亡くなる5年前くらいから
「書いている」
と言わなくなったのに気が付きました。
何があったのだろう?
当時は「バブル」の真っ最中で(注1)
地価・株価の高騰(注2)、それに伴う相続税負担の増加によって
遺産分割の当初の構想が崩れてしまったから、
先行きの予測が立たなくなったからではないか、と今では想像しています。
欲の主張の応酬で収集が付かない状況でしたが
当時、勤務を始めた相続税専門の税理士事務所の所長先生のアドバイスもあり
法定相続分での着地点となりました。
税務に私が携わっていなかったら、円満解決は難しかったと思います。
手書きの遺言書の場合は、
「紛失したり」「無い」と、こんな風に揉めます。
だから、公正証書をお勧めしています。
出来れば、お元気な間に
内容を皆に伝えておくと更に安心です。
意見を交えて、皆が満足する内容にして頂くと代々の繁栄につながります。
(注1)昭和61年12月(1986)~平成3年2月(1991)
(注2)日経平均株価38,957円・平成元年12月29日:史上最高値記録